卯月ユウトオフィシャルブログ

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《旧ブログより》「世界でいちばん長い写真」レビュー

皆さんこんにちは。卯月ユウトです。

 

今回は新作、ではないですが、昨年映画化もされた誉田哲也さんの「世界でいちばん長い写真」について書いていきたいと思います。

 

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上が映画化を記念に作られた表紙、下が従来の表紙です。

 

 

《あらすじ》

人気者だった親友の洋輔(ようすけ)が転校してから、宏伸(ひろのぶ)の毎日は冴えない感じだ。特にやりたいこともなく、クラブ活動の写真部でも、部長からしかられてばかり。そんなある日、祖父の古道具屋で、大砲みたいにごつい不思議なカメラに出合う。世界一長い写真が撮れるカメラって!?

その日から、宏伸の日常がきらめき始める。ワクワクして胸にジンとくる、青春小説の新たな傑作!

 

《感想》

主人公の宏伸は中学3年生で受験生。親友が転校してしまったことで冴えない毎日……

と、この時点で『ああー、こういうのある!』と思えるのがすごいところ。武士道シックスティーン」〜「武士道エイティーン」のシリーズでも言えることですが、誉田さんは10代のなんかもやっとした、言葉にならない感情を描くのが本当に上手いんです。

そんなある日、宏伸は祖父の古道具屋でマミヤのスリットカメラを改造した、360°パノラマ撮影ができる特別な1台に出会います(彼曰くグレートマミヤ)。

そのカメラで良い写真を撮ろうと、ひまわり畑へ行き、納得する一枚を撮影することができます。

やがて、カメラを改造したという祖父の友人と知り合い、彼が作成した新たなカメラで、世界一長い写真を撮り、ギネスを目指します。

淡々と書かれていますが、主人公の心の変わり方は読んでいてひしひしと伝わってきますし、彼の周りにいる人間のキャラが色々で、とても楽しませてくれます。

物語は世界一長い写真を撮り終えたところで終わりますが、その後彼がどのような生活を送って行ったのか、とても気になります。

 

《まとめ》

さて、ここまで「世界一長い写真」を読了後の感想を書いてきました。冒頭でも紹介した通り、この作品は昨年映画化もされました。

また、撮影のロケ地が知多半島ということで、とても身近に感じます(半田市在住なので)。

今度向日葵の綺麗な「花ひろば」も行ってみたいなぁ。

 

 

 

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「君がここに居たこと」

 

・君との頁

 

〈2〉

「ねぇ、何読んでるの?」

その一言で僕を本の世界から現実に引き戻したのは、前の席の凛花だ。僕のテリトリーに唯一入り込んでくる、邪魔者というとさすがにあれか。でもそんな感じだ。

「こころ、夏目漱石の」
「またそれ読んでるの。何回目?」
「そんなのどうだっていいだろ」
「まあそうだけど」

そうして、凛花は前に向き直った。
僕も手元の本に目を落とす。