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映画「青くて痛くて脆い」は青春サスペンスじゃない⁉︎ 鑑賞した感想 (ネタバレあり)

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デビュー作「君の膵臓をたべたい」が300万部を突破する大ヒットとなった、住野よるさん原作の青春サスペンス(ブログタイトルの通りサスペンスではない)。

 

「青くて痛くて脆い」のあらすじ

人付き合いが苦手で、常に人と距離をとろうとする大学生・田端楓空気の読めない発言ばかりで周囲から浮きまくっている秋好寿乃

 

ひとりぼっち同士の2人は磁石のように惹かれ合い秘密結社サークル【モアイ】を作る。モアイは「世界を変える」という大それた目標を掲げ、ボランティアやフリースクールなどの
慈善活動をしていた。

周りからは理想論と馬鹿にされながらも、モアイは楓と秋好にとっての“大切な居場所”となっていた。

しかし秋好は“この世界”から、いなくなってしまった…。

秋好の存在亡き後モアイは社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系の就活サークルに成り下がってしまう。


変わり果てた世界。
取り残されてしまった楓の怒り、憎しみ、すべての歪んだ感情が暴走していく……。
アイツらをぶっ潰す。

秋好を奪ったモアイをぶっ壊す。
どんな手を使ってでも……。


楓は、秋好が叶えたかった夢を取り戻すために
親友や後輩と手を組み【モアイ奪還計画】を企む。

青春最後の革命が、いま始まる―― 。

 

「青くて痛くて脆い」のキャスト

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吉沢亮(田端楓 役)
杉咲花(秋好寿乃 役)
岡山天音(前川董介 役)
松本穂香(本田朝美 役)
清水尋也(天野巧 役)
森七菜(西山瑞希 役)
茅島みずき(川原理沙 役)
光石研(大橋 役)
柄本佑(脇坂 役)

 

「青くて痛くて脆い」の感想と評価

脚本・演出などについて

「青くて痛くて脆い」は、「君の膵臓をたべたい」住野よるさん原作、妖怪人間ベムを手掛けた狩山俊輔監督による青春映画です。

青年期(大学生)ならではの“青くて痛い”葛藤と、“脆さ”を描いた作品です。先にも書いた通り誰一人死ぬことはなく、“サスペンス”ではありません。

 

原作小説を先に読んでいた私にとって、サスペンスにしよう、しようという姿勢はちょっといただけなかったです。特に、主人公の楓が親友の董介と共に居酒屋でモアイの会合を盗み見るシーンの演出。モアイ奪還を思い描く時に、バックで流れるのは狂気を感じる音楽。なんか違う。そう思ってしまいました。

もちろん楓が、モアイのリーダー秋好が自分の思いとは違う方に行ってしまったことに憤り、秋好死んだ、と表現するのは原作小説にもありました。それでミスリードをさせようというのもその通りです。

ですが、もう少し控えめなミスリードの誘い方をして欲しかった。映画の演出ほど、大仰な物ではなかった。まあこれは、小説と映画とでのメディアの違いということで仕方ないのかなとも思いますが。

 

また、サスペンス演出をするあまり、それぞれのキャラクターの造形が少し物足りないものとなってしまった感がありました。例えば、楓と川原さんの関係性だとか。でもまあこれも、ストーリーには直接影響しないことなので良いかもしれません(受け取る側の問題だから)。

 

それから、モアイを潰すために楓がSNSに情報をばら撒くシーン。その後、第三者の反応が次々と返ってくる演出は、なにかスマホを落としただけなのにに通じるものを感じました。便利なだけではない、ネットの危険さを訴えるという面で良い演出だと思いました。

 

キャスト・演技について

主人公の田端楓を吉沢亮さんが、ヒロインの秋好寿乃を杉咲花さんが演じていますが、お二人とも演技力が高く、ラストの感情をぶつけ合うシーンは大きな見どころです!

また、先程も書いた楓がモアイの情報をばら撒くシーンでの、喉を使った演技が緊迫感を伝えてきて凄く良かったです。

 

ちなみに、この映画には原作にはいない人物が登場します。それは、森七菜さん演じる不登校の中学生・瑞希と、光石研さん演じる瑞希の担任教師・大橋です。

個人的にはこの2人は結構好きなんですよね。いいアクセントになってるなあと。

瑞希を説得するため、彼女が通うフリースクールの学園祭に訪れるシーン。瑞希の為を思って学校へ戻ろうと言うのですが……裏目に出てしまうんですよね。このお二方の演技は本当に良かったと思います。

 

また、脇坂役の柄本佑さんも登場シーンは少ないですが凄く印象に残り、流石だなあと思いました。

若いキャストが多い中(柄本さんも33歳と若いけれども10代20代が多いので)、柄本さんと光石さんの演技は何か安心感を与えてくれる感じがしました。

 

音楽・音響について

最後に、映画を彩る音響について。

先ほども書きましたが、サスペンス演出のための恐怖心を煽る音響は少し違和感を感じてしまいました(話の肝となる部分を知ってしまっていることも大きく影響しているとは思いますが)。

その他の部分のBGMは何の違和感もなく、スーッと入ってきた印象です。

 

ただ、終始違和感を感じてしまったのは、アテレコです。

映画では、映像を観ながらアニメのように声を後から録る場合も多いです。この「青くて痛くて脆い」も例外ではありません。

今まで観てきた大抵の映画は違和感を感じませんでしたが、この作品では、何か声が浮いている印象を受けるシーンが多々ありました。

 

個人的には、瑞希が学園祭で歌っていた「サメに喰われた娘」だったかな?が、かなりインパクトがありましたね。

瑞希を演じる森七菜さんは歌手としても活動されていて、その歌唱力を存分に発揮しています。ベースは初挑戦だったようですが、とても様になっていました(音響関係ない)。

 

主題歌を務めたのは、若者を中心に人気のエモーショナルロックバンドBLUE ENCOUNT

「ユメミグサ」は何年も前に構想はあったようですが、今回のオファーで欠けていたパズルの最後のピースがハマって出来上がったそう。

映画の世界観ともマッチしていて、自身最高傑作と呼べるくらいの名曲だと思います!

 

「青くて痛くて脆い」の総評

(全ての項目「星5」が満点)

 

脚本 ⭐️⭐️⭐️・・

演出 ⭐️⭐️・・・

キャスティング ⭐️⭐️⭐️⭐️・

演技 ⭐️⭐️⭐️⭐️・

音響 ⭐️⭐️・・・

主題歌 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

トータル ⭐️⭐️⭐️・・